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人の早苗植うるころ、種ほどこしてけり。葉月のころ、穂の出でたるに、嵐吹きてければ、「花散りぬ」と嘆くを、
あまりにもの急ぎし給へばこそあれ。
わが稲は、この頃植ゑにしかば、嵐のわざはひにもあひはべらず
と、人にたかぶりけり。
人の刈り収むるころ、少しばかり穂の見えたるが、はや霜の置きてければ、みな枯れぬ。
「ことしはいと早う霜の置きしなり」とて、年をのみ罪していまだ悟らざりしとなり。
中学生たちが使っている教材に、上のような古文が出てきます。
誰かが田植えをする頃に種まきをはじめたマイペースな人がいて、
穂が出たころに「嵐で稲の花が散っちゃったよ」と嘆いている人に向かって
「お前があんま急ぐからじゃね?うちの稲なんか最近植えたばっかだから、嵐の影響ナッシングw」と、ドヤ顔で言い放ちます。
ところが他の人たちがいざ収穫に入ろうかという頃になって、ようやくこの人の植えた稲にも穂が出たものの、もう時期が遅すぎて霜が降りる季節になっていたので、霜でやられて全部枯れちゃって、
「けっ、なんか今年は霜の時期早すぎんじゃねーの?」と、自分の浅はかさを季節のせいにし、本人は何がまずかったのか全く気づいてない。
というお話です。
毎年この時期になると、このお話を思い出します。
振り返れば一年前の春に「ここは、早めにやっておこうね」と渡した宿題を後回し。
夏期講習で「ここはもう二度復習する余裕はないから今覚えて!」と渡した宿題、余裕の後回し。
秋に「定期テストと実力テスト、範囲が違って両立はきついのはわかるけど、今やっとかないと忘れてしまうから、我慢して頑張ろうよ!」と渡した宿題も安定の後回し。
冬期講習(略)もはや熟練の技の光るが如き堂々たる後回し。
そして入試直前の今、「せんせー!ここ本当に出るんですか?」とか質問に来られてもね。
「うーん、どうだろうね?村上春樹的にいうと、出るかもしれないし出ないかもしれない」
「だれですかそれ?歴史の人ですか?」
「え?いやいやなんでもないよー。出るんやない?けっこう大事なとこだし」
「出るか出ないかはっきりしてください!どれもこれも大事とか言われても時間ないんで!」
「OK、じゃあ言うちゃろう。先生、キミが塾に通ってる間に、そこが出るって少なくとも4回は言うた」
「うわぁ、最悪」
「最悪じゃないじゃん。やればいいじゃん。今からでも」
「えーっ、もう無理やし、こんなにたくさん覚えられるわけないって・・・」
というパターンに陥ってしまう人が、毎年毎年ごく少数ではありますが必ずおられます。
まさに「ものを引き延ばして、時失ふ者」。
本年度の「ものを引き延ばして時失ふ者・ザ・イヤー」は誰になるやら。
先生たちが「今やっておこう!」と言って渡したものを着実にそのタイミングでやり遂げてきた人たちは、こんなギリギリの時期になって「あれもこれもやってない!」なんて慌てはしません。
いっぽう「後でやればいいや」「そのうち時間が出来てから」なんて思って、その場の苦行から逃げてしまった人たちは、負債がどんどんたまって、一番大事な時に身動きが取れなくなります。そんなことにならないよう、言って聞かせて自習に呼んで、励まして一緒にやってきたけれど、やっぱり本当にその場面になってみないと、解らないことっていうのはあるものです。
でも、とりあえず気付いたんなら遅くはないんだよ。残り数日しかなければ、数日しかないなりのことをやるしかないんだよ。やろう。さっさ、やろう。今この瞬間にやろう!
ぴしっと背筋伸ばしてね。あらかじめ想定できる質問については、しっかり言うことを決めて、ちゃんと伝えられるように練習しようね。
「志望動機はなんですか?」
「はいっ、私が貴校を志望したのは・・・」
「おおっ、すごい。ハキハキ言えるようになったね。じゃあ、ちょっと今日は想定外の質問が来た時の練習もしてみようか、最近、うれしかったこと、何かありましたか?」
「はいっ!・・・えーっと・・・えーっと」
質問の答えが思い浮かばないと、ひざに乗せていた両手をモゾモゾとせわしなく動かしてしまう。
「あれ、どうかしましたか?手の中に何か持ってるの?」
はっと気付いて、慌てて指先をまっすぐ伸ばす。
「もう一回ききますよ。最近、うれしかったことは?」
「えーっと、はい、えーっと・・・」
また無意識に手が動き出す。
「うーん。どうしたのかな?あっ、ひょっとして手の中にハムスターでも飼ってるんですか?」
「いえっ!ハムスターは、飼っていません!」
「じゃ、もう一回。うれしかったことは」
えーっと、モゾモゾ・・・
「やっぱなんか手に持ってるの?ハムスター、飼ってる?」
「いえっ!ハムスターは、飼っていません!」
「じゃあ、次の質問。尊敬する人とその理由をおしえてください」
「ええー?えーっと、尊敬する人は・・・えーっと」・・・モゾモゾ
「絶対、ハムスターおるやろ?!」
「いえっ!ハムスターは、飼っていません!」
以下続く
ハムスターを飼っていないということだけは、とてもよく伝わりました。
12月の模試は今年一番の難しい内容になっていました。
どの科目にも数問ずつ、「実際のテストでここまで捻った問題出るのかな?」と思うような問題が見受けられました。
そして県全体の平均点もまれにみる低得点。
そのせいか、うちの塾でも前回の模試より点数が下がっていたのに、偏差値は上がっているという人がたくさんいました。
とはいえ、まだまだ今の時点で志望校の合格ラインである80%に到達している人はそう多くはありません。そして、それを超えるために、冬期講習もあるし、期間もまだ2か月半ほど残されていますから、落胆する暇があったら、日々の勉強に打ち込んでください。
そんな今回の模試ですが、難しいのは仕方がないとして、この結果をいったい今後の勉強に、どう活かせばいいのでしょうか?
そのカギは「基礎」にあります。
じっさいの入試本番の日にも全く同じことが言えるのですが、「問題が難しければ難しいほど、基礎をいつもどおり正確に得点できた人が有利」という法則があるのをご存知でしょうか?
今回の模試、難しくて見たことも無いような問題が多いからと言う理由で、途中で「なにこの問題?意味解らん!」と、半ばヤケを起こしたり動揺したりしながら問題を解いた人は、本来の力だったら取れるはずの問題も落としてしまい、偏差値も下がってしまっていたのではないかと思います。ところが、淡々といつも通りに解いて、いつも出来ているところだけをミスなく確実に取れていたという人は、点数は低くとも偏差値は上がっていますよね。
これが意味していることは「結局は動揺した人が不利」と言うことです。
基本的な易しい問題を見つけ出し、それをせいいっぱい解けば、それなりに成果は出ます。それを、「こんなの解けるわけない」とあきらめの気持ちで取り組めば、取れるはずの点数も落とすから、勝負では負けてしまうのです。
勉強は気持ちの問題が8割です。すっきりした気持ちで勉強すること。素直な気持ちで取り組むこと。基礎を大事にし最後まであきらめないこと。など、言い古された言葉通りの当たり前の姿勢を崩さずに試験を受ける人が結局は最後に勝ち残るものではないでしょうか?